五十嵐貴久原作のホラーサスペンス「リカ」恐怖の妄想ストーカードラマの感想

五十嵐貴久原作「リカ」シリーズ

五十嵐貴久原作「リカ」シリーズ

10月スタートの新・大人の土ドラ「リカ」(毎週土曜日23:40~放送中)を見ました。強烈な 恋愛サイコパスの自称28歳看護師「雨宮リカ」。

第1話「あなたは運命の人」からそのサイコっぷりをかっ飛ばしていましたが、今夜その第2話が放送されます。

 

第1話「運命のひと」

目、鼻、口、と顔の1つ1つのパーツは美しいと言えなくはないけれど、顔色が悪く見た人に何か不健康で奇妙な印象を残す雨宮リカ。28歳と言う年齢には不釣り合いの落ち着きを見せる彼女が、医師会の重鎮の推薦状を持って看護師を募集していた町の個人医院、花山病院の面接に訪れる。

 

面接時間に遅れて登場したリカ。採用面接には不釣り合いな花柄のワンピースで、お詫びもせずツカツカと面接官の前に進み出て、なぜか病院の時期跡取り候補で副院長の大矢医師に向かって「雨宮リカ、28歳です」と自己紹介を始める。

面食らう医師の面々。

 

履歴書にある経歴は看護師としては十分と言えるもので、面接をした看護師長や大矢医師は雨宮リカの印象に何か不吉なものを感じつつも、医師会の重鎮の推薦状もあり仮採用を決定。花山病院で看護師として働き始める。

自己紹介もろくにせず、大矢医師以外の医師の担当につけられると舌打ちをするリカに、「看護師として不適格では」との印象を深める看護師長。面接時から、リカの腕にある不吉な痣にも気づいていた。感情が高ぶると、リカの手首の痣は怒りの象徴のようくっきりと浮かび上がってくる。

 

実はリカは大矢医師と偶然出会っていた。たまたま居合わせた店で倒れた男性を、大矢医師とリカが救命措置を行ったのだ。リカは救急車に同伴して立ち去る際に「君が居てくれてよかった」とほほ笑む大矢医師に運命を感じる。立ち去り際に大矢医師が落とした赤いバラ2本をホルマリン漬けにして自室に保管。

リカが花山病院の看護師に応募するすこし前に、差出人不明の鮮やかな赤いバラが1輪入ったハーバリウムの贈り物が大矢医師に届くのだが、実はこれがこの時のバラで差出人はリカだった。リカは、大矢の部屋に飾られている赤いバラを見て満足げにほほ笑み、こう言った。「赤いバラの花ことばをご存じですか。2輪なら「この世界にはわたしとあなた二人だけ」1輪なら」ここでリカは大矢医師に向かって言う。

「あなたを愛しています」

 

怖い。

 

ちなみにリカはまだこの花山医院に来て1日目。さらに言えば、以前の運命の出会い(リカはそう思っている)も一度だけ。それ以前にリカと大矢医師には何のコミュニケーションも関係もないのだ。

 

たった一度言葉を交わしただけで、「愛してる」とはどういう思考回路なのか。

 

そして、この後も大矢医師の叔父であり育ての親でもある花山病院の院長(現在は半身マヒで特別室に入院中)にうまく取り入り、「結婚するならこんな子がいいんじゃないか」と言わせたり、突然「結婚しましょうよ」と至近距離で見つめて言い放ったり・・・と勤務中の大矢医師にまるで恋人かのような距離感で接し始める。

大矢医師が身寄りのない患者の最後を看取ろうと連日病院に泊まり込んでいることを知ると、ボヤ騒ぎを起してナースステーションを空にした隙に呼吸器のチューブを外して殺害までしてしまうのだ。そして、リカの行動に不審を覚えた看護師長が患者が死亡した日の行動を問われると、ただ生かされてる生に何の意味があるのかと自己都合の理論を言うリカ。「あなたには辞めてもらいます」という看護師長が去ったあとに「死ねばいいのに」とつぶやく。

 

数日後、看護師長が階段から転落。頭から血を流した状態で発見される。

階段の手すりが壊れていたのだ。

看護師長は、いつも階段の手すりをつかんで駆け上っていることをリカは知っていた。そして、階段の手すりのネジは緩んでいて1週間後に修理される予定だったことも。

 

リカの異常性

①まず、リカは会ったばかりの大矢医師を以前からの恋人のように接している。まともに会話するのも自分が好意を抱いている大矢医師だけ。

 

②初対面の場に大矢医師が落としていったバラの花を標本にして飾っている。花山病院へも、匿名で大矢医師あてにバラの標本を送っている。(ドラマ内では患者からのお礼のハーバリウムだと思われているが)

 

 ③急患が入った際に大矢医師が治療に使った手袋をゴミ箱から持ち帰り、自宅でガラス瓶の中でオイル漬けにして標本のように飾りうっとりと眺めている。

 

④半身まひで花山病院に入院中の院長に取り入り、「結婚するならこんな子にしろ」と言わせている。

 

⑤診察中の大矢医師の白衣のポケットからプロ並みの腕前でボールペンをさりげなく抜き取り、自宅に持ち帰る。

 

⑥自宅にガラス瓶の中に標本のように飾られた無数のコレクション。メガネなど誰か(男性?)の私物のようだが、誰のものかは不明。

 

⑦大矢医師との間の邪魔になるものは即排除。大矢医師が気にかけていた患者を事故にみせかけて殺害。「辞めてもらう」と言った看護師長を事故に見せかけて殺害(未遂?)

 

ボールペンに関してはなぜかこれはガラス瓶にコレクションせず、その後「これ、先生のものですよね」と落とし物を見つけたかのように渡しているが、何かある気がする。中に盗聴器とか発信機とか仕掛けたように思えてならない。

 

第1話で、リカを問題視していた看護師長が階段から転落。頭から血を流し生きているのか死んだのかわからない状態で終了した前回。10月12日(土)23:40~第2話「これは私たちだけの秘密」が放送されます。

 

雨宮リカ 永遠の28歳を名乗るモンスター

雨宮リカを演じるのは高岡早紀。リカが好意を持つ大矢医師を小池鉄平が演じる。

高岡早紀を久しぶりに見たけれど、整った顔立ちのパーツを持ちながらどこか存在自体に奇妙で陰鬱な印象を与えるリカ役を、まるでリカそのものがそこに居るかのように演じている。

原作では、「卵の腐ったものに酢をかけたような臭い」がするリカの体臭が、リカの邪悪な感情によって強烈になったり薄まったりするのが異様さの1つとして表現されているのだが、ドラマはそれをリカの感情の強さによって強く浮き出る「手首の赤い十字のあざ」で表現されていた。

 

最初に原作を知らなかったときに、「あの痣はなんだろう?」と思ったのだが、第3作の「リバース」を読むとその理由がなんとなくわかるのではないだろうか。

 

自称28歳のリカを演じるにあたって、46歳になる高岡早紀は特に年齢を意識して役作りはしていないという。自称28歳というとおり、リカは実際は28歳ではない。このドラマの第1部は、原作では「リカ」シリーズの中の「リハーサル」という4作目の作品なのだが、おそらくこの時点でリカは20代ではない。30代後半~40代くらいであろうと作中で推測される。

「女性は28歳まで結婚するのが一番幸せ」という強い思い込みによって、過去・現在・未来において結婚するまでは「リカ」は永遠の28歳なのだ。

 

「リカ」を知ったのは今回のドラマが初めてだったのだが、原作が気になり現在刊行中の五十嵐貴久「リカ」シリーズをすべて購入してしまった。ネットの読者レビューを見ると「胸糞が悪くなるような作品」など読後感の最悪さが書かれているレビューが多い。

 

正直、第1作の「リカ」にそこまで強い恐怖は感じなかった。雨宮リカの描かれ方もその異常性は感じられたが、モンスターのような得体の知れないバケモノ・都市伝説のような存在に感じられた。

しかし、第2作の「リターン」以降は違った。あっという間に1晩で4作品読み終わってしまった。どれも悲惨な結末に終わり読後感は「最悪」なのだが、主人公雨宮リカの印象は1作目「リカ」から4作目「リハーサル」までを読んだ時点で確実に変わる。

 

得体の知れないモンスターは存在しない。「リカ」のようなバケモノは、案外身近にいるのかもしれないと感じた。

 

ドラマは10月放送で第1部、11月に第2部と放送予定のため、興味のある方はこの機会に原作も合わせて読むと楽しめるのではないだろうか。

 

「リカ」シリーズ時系列

 

「リバース」(雨宮家の家政婦、幸子の視点で描かれたリカの幼少期の話)

「リハーサル」(ドラマ第1部。花山病院が舞台。「リバース」の約20年~25年後の世界)

「リカ」(ドラマ第2部の舞台。ドラマ第1部から約3年後の世界)

「リターン」(「リカ」から10年後の世界。リカの起こした事件を追う女刑事の目線)

 

「リメンバー」(2019年12月頃刊行?)

 

【放送予定】

毎週土曜日 23:40〜24:35

◆第1部:2019年10月5日(土)〜2019年10月26日(土)

原作 五十嵐貴久「リハーサル」)

◆第2部:2019年11月9日(土)〜2019年11月30日(土)

(原作 五十嵐貴久「リカ」)

 

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