リカ・シリーズ最新作「リメンバー」は”あの人物”の20年後だった。

リカ・シリーズの最新作「リメンバー」、やっと読みました!

「リメンバー」 五十嵐貴久原作

「リメンバー」 五十嵐貴久原作

12月5日(木)発売のこの作品は「リカ」「リターン」「リバース」「リハーサル」に続く、リカシリーズの第5弾となります。先日まで放送されていた、新・オトナの土ドラ「リカ」がきっかけで、全シリーズをそろえた方も多いのではないでしょうか。

 

かくいう私もそのひとり。ドラマと小説は別物と考えていいくらい、恐怖の度合いが違います。もちろん、小説の方が異様に怖い・・・

 

 

「リメンバー」の舞台

今作の舞台は、雨宮リカ事件の20年後の世界。

「雨宮リカ事件」とは、リカがマッチングサイトで知り合った会社員・本間隆雄を、目、鼻、耳、舌、手足を切断して拉致した事件だ。当時事件に関わった菅原刑事(当時は、その現場を目撃したことで心身に異常をきたす。その10年後、菅原の教え子である梅本刑事に追いつめられ、リカは死亡した。

 

それから20年後・・・・

 

フリーの女性記者が、男性のバラバラ遺体を遺棄する事件が発生した。その女性の容姿は、かつて悲惨な事件を引き起こした「雨宮リカ」にそっくりだった。

 

警察はコールドケースという未解決事件の捜査部門で、雨宮リカの事件を追っていた。実は、10年前に死亡したと思われていたリカは、その後搬送中に行方不明になっていたのだ。リカの事件による「心理感染」を疑った警察は、帝光大学で集団心理の研究を行うLS(レクチャーシップ)の教授とメンバーに、検証を依頼する。

 

単独で起きたかのように見えるこの事件。しかし、リカの死によって事件が解決した(と思われていた)10年の間にも、類似したバラバラ殺人が4件発生していた。リカの事件に影響を受けた人物の「心理感染」による犯罪なのか?それとも・・・

 

リカという恐怖の「増殖」

今回はリカの姿は「実際には」登場していません。

 

「人の見えている世界と、自分の見えている世界は違う」

わかりきったことですが、今回は途中まで騙されてしまいました。いい意味で、

「そうだったのか!」というラストです。関係を整理するために、登場人物の名前と関係図を書きながら読み進めていったのですが、途中「あれ・・?」と思った理由が最後にわかりました。

「リメンバー」の構想は、読者からの「あの人物のその後に興味がある」というダイレクトメッセージから生まれた、と作者のあとがきにもあります。

 

「リメンバー」の刊行を、作者の五十嵐貴久先生は”「リカ・クロニクル」の増殖” と書かれています。第5弾となるこの作品は、現在の「リカ・シリーズ」の時系列でいえば最後尾になりますが、今後はふたたび過去も描かれていくとのこと。

 

リカが家族を亡くしてから、10代後半~20代後半までのエピソードはまだ描かれていません。今回の「リメンバー」では、花山病院の事件(「リハーサル」)以前に、リカの起こした事件に、すこしだけ触れられていました。今後は、どの時代の「リカ」が描かれていくのか、楽しみです。

 

作中での疑問

「リカ事件の20年後」となっている「リメンバー」ですが、ちょっと疑問が。

まず、リカシリーズの「リカ」は「リハーサル(本間隆雄ストーカー事件)」の3年前に起きた事件です。そして、「リターン(リカを追う女刑事が登場)」がその10年後。そして、最新作の「リメンバー」がその10年後なので、全作品を時系列で追えばこうなります。

 

③「リバース」リカの幼少期~15歳くらいまで

★20年経過★

④「リハーサル」【花山病院事件】リカ、自称28歳(推定30代半ば)

★3年経過★

①「リカ」リカ、自称28歳(推定30代後半)

★10年経過★

②「リターン」リカ、自称28歳(推定40代後半)

★10年経過★

⑤「リメンバー」リカ死亡?(生きていれば、推定50代後半)

 

※タイトルの前の数字は刊行順です。読む際には刊行順がおススメ。

 

という感じなのですが(推定年齢は個人的な見解です)、「リメンバー」の作中でリカの過去について触れられている部分があります。それによると、リカの過去で「30年前の10歳の頃」の話が出てくるのですが、それだとリカは最新作の「リメンバー」の時点で40歳という計算になります。さらに、20年前の本間隆雄を拉致した「雨宮リカ事件」の時は20歳ということに。それは設定的にありえないので、ここは、「40年前」ではないでしょうか。

 

それから、雨宮梨花(リカ)について。

最新作「リメンバー」では、リカの幼少期について刑事が調べた情報を話していますが・・・

リカシリーズ第3作目の「リバース」を読んだ人なら、「ん?」と思うのではないでしょうか。雨宮リカには、双子の姉妹の結花がいました。「リバース」で最後に生き残ったのは、華やかでフランス人形ようだった姉の梨花(リカ)ではなく地味で目立たない妹の結花です。

 

結花は梨花(リカ)同様に美少女でしたが、幼い頃に重い病気になり、容姿が変貌してしまいました。その時に治療のために飲ませていたお茶が「腐った卵に酢を入れたような」体臭の始まりのようです。また、病気の時に使っていた強い麻酔が原因で神経が麻痺している可能性が作中でも書かれています。

「お姉さま(梨花)のようになりたい」が結花の口ぐせでした。

そうして、結花はリカになったのです。

 

至近距離で銃弾を受けても男性を跳ね飛ばすくらい動き回れる、常人離れした体力。最新作の「リメンバー」でも、リカ(結花)の常人離れした体力は、「先天性無痛症」の可能性が指摘されています。しかし、リカの場合は幼い頃は母の体罰で痛みを感じているので、先天性ではなく病気による後天的なものだと考えられます。

 

「ん?」と思ったのは、「リメンバー」で雨宮家の過去を聞き込みした刑事の話で、姉と妹が逆転していること。「姉」の梨花が日本人形のような容姿。「妹」の結花がフランス人形のような容姿・・・となっているのです。

実際に姉妹が登場する「リバース」では、フランス人形のような梨花が姉で、日本人形のような結花が妹。結花は梨花になりたがっていた、と書かれています。40年近く昔のことなので、姉妹を知る人の記憶もあいまいになっているのでしょうか。

 

最後に

リカの心理は異常ですが、ふと考えてみると「自分の中にもリカと似た部分があるかもしれない」。そう思わせるような何かが、「リカ」にはあります。

誰のこころの奥にも、日ごろは見えないように蓋をしている「モンスター」が存在する。リカに嫌悪や恐怖を抱きつつ、また読みたくなってしまうのは、どこか自分の中に似た部分を感じてしまうからかもしれません。

 

新・オトナの土ドラ「リカ」から見始めた人には、ちょっと刺激が強すぎる、五十嵐貴久の「リカ・シリーズ」。読み始めたら、「リカ」の世界を全部読まずにはいられない中毒性があります。

 

 

 

 

 

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