【五十嵐貴久原作】新・オトナの土ドラ「リカ」第5話感想

 

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五十嵐貴久原作、新・オトナの土ドラ「リカ」第2部がスタートしました。第1部最終話(4話)の続編として、前回から3年後の世界が舞台となっています。

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番組制作のリサーチのために「小説家・神宮司たかお・38歳」としてマッチングアプリに登録した本間隆雄(大谷亮平)。新たな「運命のひと」と出会うためにマッチングアプリに登録した雨宮リカ(高岡早紀)。リカが「たかお」の新着登録を見たその時から、惨劇の序章は始まったのです。

 

第5話 惨劇のあと

花山病院の惨劇から3年の月日が流れていた。

病院は廃院となったが、リカは3年前に失った大矢医師(小池徹平)のことをまだ忘れられずにいた。自宅で床に横たわりながら、大矢との思い出のハーバリウムを眺めるリカ。(過去のフラッシュバック映像。リカがかつて愛した男性たちの記憶が断片的に映し出される。回想の中の男性たちは転落死や、血を流し絶命している。その中に大矢もいる)

 

そんな中、自宅へ荷物の配達に来るおばちゃんから「きっと今度は運命の人に出会えるわよ」と、マッチングアプリを勧められたリカは登録をしてみることにする。

時を同じくして、映画プロデューサーの本間隆雄は「作家の恋」という小説の映画化の企画に悩んでいた。小説家が文通によって恋に落ちるこの作品を、文通=現代の出会い「マッチングアプリ」に置き換えた企画で行こうと考える。本間は、そのデータ収集のために架空のプロフィール「作家・神宮司たかお・38歳・独身」としてマッチングアプリに登録してみることにする。

 

その頃、リカの携帯には新規会員の登録を知らせる「新着・神宮司たかお」の表示が届いていた。プロフィールを開いてみるリカ。「作家さんなんだあ・・・真面目そう」そうつぶやくリカの目は、何かを捕らえたかのように一点を見つめている。

 

本間隆雄は、実際は小説家でもなく、38歳でもなく、独身でもない。年齢は43歳、妻の葉子(徳永えり)と溺愛する娘・亜矢(稲垣来泉)がいる。しかし、多忙さゆえに家庭をおざなりにしていた間に妻は上司と不倫の関係になっていた。それが原因で妻と娘とは現在別居状態でいる。久しぶりに自宅に帰っていた妻と会話を交わす本間。妻と不倫関係にあった上司はすでに会社を辞めており、もう会ってはいないという。しかし、二人が関係を修復するにはまだしばらく時間がかかりそうだった。

 

「たったひとりのひとでいい」

宅配のレトルトミートソースの最後のひとつに手をつけるリカ。大矢を失ってから沈みがちだったが、たかおとの出会いがリカに変化を与えたのか、久しぶりに毎食欠かせなかったミートソースの宅配も頼むようになる。家を訪れた宅配のおばちゃんに「顔色がいい。いいことがあったのか」と問われ「よく知らないけど波長があう」人に出会ったと話す。いろんな人に出会えなくてもいい。出会うのは「たったひとりの人でいい」と言うリカ。

 

場面は変わって映画会社。本間の携帯はひっきりなしにリカのメッセージを受信していた。リカへの返事に追われ、仕事どころではなくなっていた本間にアシスタントの坂井(内田健司)が「会ってみてはどうか」と提案する。リカに携帯の連絡先を伝えると、まもなく、本間の携帯に「非通知」の着信が入る。リカと初めて会話を交わす本間。

行きたいレストランがあるがどうか、とリカに尋ねる本間。レストランの名は「AARU(アール)」。そこはリカがかつての恋人(と思い込んでいる)大矢医師(小池徹平)と出会ったレストランだった。「私もそこへ行きたかったんです」と答えるリカ。

 

「ありがとう。リカさんがいてくれてよかった」

 

本間のその言葉に、過去に大矢と「運命の出会い」を果たした時の回想するリカ。

(ありがとう。あなたがいてくれてよかった)

 

電話を切ったリカは、ひとりつぶやく。「わたしを選んでくれてありがとう」

 

「AARU(アール)」運命の場所

数日後、思い出のレストラン「AARU(アール)で大矢の座っていた席を見つめながら回想するリカ。そこへ、赤いバラを持って大矢が座っていたその席に黄色いガーベラを持った「神宮司たかお・本間」が現われる。

 

「雨宮リカ。28歳です」

 

ことさら年齢を強調するように自己紹介するリカ。容姿は悪くないがどう見ても28歳に見えないリカに、しばし言葉が出ない本間。席につき、乾杯をする二人。リカはことさらはしゃいでいるように見える。リカの腕のあざは、リカの感情の高ぶりを表すように色濃くなっていった。その異様な空気と痣に気づき、思わず目を奪われる本間。リカは「リカは本名。神宮司さんも本名か」と尋ねる。そうだと答える本間に、いきなり「たかおさん」と呼んでいいかと聞くリカ。

 

マッチングアプリで結婚した人もいる。

本当にいるんですね、運命の人って。

運命の相手って会えばわかる。心で感じる。

 

「リカ、28歳で結婚するのが夢なんです」

 

リカが一人でどんどんと話し続けている。そのペースに引き気味の本間。しかし、両親を亡くしている、というリカに(なるほど、だから”家族を持ちたい=結婚したい”なのか)とやや納得する本間。本間自身も両親を亡くしているため「いい奥さんになれますよ」とリカに声をかける。「いい奥さんになれる=本間の奥さんになれる」と思い込むリカ。「うれしい・・」と思わず声すリカの腕の痣は、さらに色濃くなっていった。

「やっと出会えた、運命のひと」

 

鳴りやまない電話

アシスタントの坂井に、「リカはどんなタイプだったのか」と聞かれ

 

「どう見ても28歳じゃない。サバを読んでる。見た目は悪くないが自分のことを「リカ」って呼ぶタイプ」という本間に「そっち系すか・・・」とメンヘラ系の女性であることを察する坂井。その間にも、リカからのメッセージは本間の携帯に届き続けている。

-次いつ会えますか

 

そのメッセージを目にした坂井は「だいぶ前のめりっすね」と本間に言う。

「これってどうやって終わるんだ」

「ほっとけばいいんじゃないすか」

 

-仕事に集中している大矢。そこへ、娘の亜矢から着信が。

 

「パパの留守電つながらないよ」そう言われ、不審に思った本間が携帯の着信履歴を見ると、30件の非通知不在着信が。留守電を見ると、メッセージの上限である30件の留守電が入っていた。すべてリカからだった。

 

-なんどもごめんなさい

-声が聞きたくて

-次はいつ会えますか

-ゆっくり食事でもできたらうれしいな

-夜遅くでも全然大丈夫

 

リカは恐ろしいほどの勢いでメッセージを吹き込み続けている。そこには相手の意思は一切存在しない。延々と続くリカの高揚したメッセージに恐怖を感じて留守電を全て消去する本間。そこへ再び着信が。留守電がメッセージの録音を始め、リカの冷たい声が流れる。

 

「たかおさん、何もウソついてないですよね」

 

 追跡

あの日。「AARU(アール)」で待ち合わせをした夜、リカは店を出た本間のあとをつけていた。そこで目にしたのは「映画製作会社」の入り口から出てきた社員に「本間さん」と呼ばれる”神宮司”の姿だった。

 

翌日、本間の勤める会社の受付で尋ねるリカ。

「こちらに神宮司たかおさんはいますか」

そんなリカに反応したのが、ロビーに居た本間のアシスタントの坂井。「神宮司たかお」という言葉から、リカが例の女だと気づく坂井。そして、同じロビーでリカに気づいたものがもうひとり居た。3年前の花山病院の惨劇を知っている、病院の元・受付嬢の千秋(夏菜)。千秋もまた、この映画製作会社に勤めていたのだ。「うそ・・なんで」凍り付く千秋。

 

「神宮司たかお、という者はいません」という受付の対応に

「じゃあ、”本間”たかおさんはいますか」

 

--

本間の机の内線が鳴る。

「受付ですが、本間さんあてに雨宮リカさんという方がきています」

思いがけないリカの来訪と、本名を知られた驚きで表情を歪める本間。

 

オトナの土ドラ「リカ」第5話感想

今回の第2部からは、五十嵐貴久のホラー小説「リカ」が原作となっています。

しかし、第一部と異なり、今回の第2部はかなり原作と異なります。リカの初版が発行された平成15年とは時代背景が異なることから、設定が変更。まず、今回の主人公の(と言っていいのかわかりませんが)映画プロデューサー・本間隆雄は、原作では印刷会社勤務のサラリーマンとなっています。マッチングアプリの登録名は”神宮司”ではなく、より本名に近い「本田たかお」。その他にも、リカの描かれ方がかなり異なっています。

 

どちらかと言えば、原作小説のリカは都市伝説に出てくる口裂け女的なバケモノのように描かれています。スティーブンキングの「IT」じゃないですが「”それ”に出会ってしまったら終わり」という雰囲気があり、見る人を恐怖に陥れる存在です。しかし、ドラマ版では高岡早紀さんの印象もあるのですが、見た目的な怖さはあまりありません。その代わりドラマ版は、リカの見た目に反した異様な言動や行動にゾクッとくる恐怖を感じます。

 

ドラマでのリカが本間の名前を知るのは、後をつけて勤め先を知ったからですが、原作小説の「リカ」ではそのあたりははっきりと描写されていません。作中で「電話番号から探偵を使って住所・氏名・職場を突き止めたのでは」と推測されています。

また、五十嵐貴久原作の小説「リカ」では、ほとんどのリカの行動心理は読者から見えない部分で動いています。読者の目の前にあるのは、リカの行動の残骸だけ。だから「得体の知れない何か」が強調されてより恐怖を感じます。それに対してドラマのリカは他者とコミュニケーションする場面も見られ、若干人間味が強くコミカルさまで感じられます。(リカの感覚のズレによる噛み合わない感もありますが)特に第6話の最後、本間の勤める映画会社を訪ねた時のリカ、本間のアシスタントの坂井、リカを知る花山病院の元職員・千秋の3人のロングショットにはちょっとコントのような雰囲気を感じて噴き出してしまいました。

 

第一部・第二部ともにリカが「運命のひと」と出会う場所となったレストラン「AARU(アール)」。古代エジプト神話における天国を現す場所の名前と言われています。奇しくも、ここを通ってリカに関わったひとたちは皆リカに殺害されてしまいました。今回の「運命のひと」本間隆雄も同じ道をたどるのでしょうか。

 

原作があまりにも怖すぎてドラマが生ぬるく感じてしまう、新・大人の土ドラ「リカ」

シリーズ4作品に続いて、この冬には最新作「リメンバー」も刊行予定となっています。

 

 

「リカ」シリーズ時系列 ※タイトル前の数字が刊行順

 

③「リバース」(雨宮家の家政婦、幸子の視点で描かれたリカの幼少期の話)

④「リハーサル」(ドラマ第1部。花山病院が舞台。「リバース」の約20年~25年後の世界)

①「リカ」(ドラマ第2部の舞台。ドラマ第1部から約3年後の世界)

②「リターン」(「リカ」から10年後の世界。リカの起こした事件を追う女刑事の目線)

 

「リメンバー」(2019年12月頃刊行予定)

 

【放送予定】

毎週土曜日 23:40〜24:35

◆第1部:放送終了

原作 五十嵐貴久「リハーサル」)

◆第2部:2019年11月9日(土)〜2019年11月30日(土)

(原作 五十嵐貴久「リカ」)

 

 

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