もともと邦画が好きなんですが、その中でも何のドラマもなく地味な日常が淡々と描かれるものが好きなんです。
とはいえ、この「百万円と苦虫女」は主人公の状況からして非日常的なんですが・・
同居していた男性が、主人公の拾ってきた捨て猫を捨ててしまったことに腹をたてて、アパートから男性の荷物を放り出したことで刑事罰を受け刑務所に入ることに。出所してきた彼女は、前科者となったことで居場所がなくなり、百万円貯まるごとに住む場所を転々と変える生活を送ることになります。
「百万円貯まったら、出ていきます」
淡々とした地方都市の描写が、ロードムービー的な雰囲気の映画です。
各地を転々とするうちに、人を寄せ付けない雰囲気の彼女に好意を抱くひとも出てくるのですが、その瞬間に彼女はその土地を出ていきます。
そして、ラストがいい。
いくつかの土地を経て、主人公はある町で過去も前科もすべてひっくるめて受け入れてくれる男の子と出会うんですが、すれ違いからその町も出ていくことに。
誤解を解こうと走る彼が、彼女のいるはずの駅に向かい階段を見上げると彼女の姿はもうない。
そして、その次のシーンで彼女がひとり駅の階段に立って振り返り、だれもいないのを確認して「くるはずないか」とすっきりした顔で言います。
そしてまた次の町への旅立ち。
ハッピーエンドではないラストがいいです。
人生って、こういう一瞬の交差の繰り返しですね。
アクション映画やSFやドラマも日常を忘れられて良いですが、たまにはこういう映画で静かな時間を過ごすのもいいですよ。